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子羊たち#1〜迷い込んだ3人 [おもいでがたり]

「nal君、今晩時間あるかね?ちょっと行ってきて欲しい所があるのだが…」

当時25歳のワタシは上司に呼ばれると、そう相談を受けた。
聞けばその夜、取引先のゼネコンのクリスマスパーティがあるらしい。
上司もよくわかっていないようだったのだが、
そのゼネコンの主催する習い事の会の発表を兼ねているとのこと。
招待状が来ているのに誰も出席しない訳にはいかない。
 
当時ワタシはアパートで一人暮らし
夕食は週の半分以上、同僚のMと飲みにいって誤魔化していた。
中心市街地のど真ん中に勤めていたので店には困らない。
毎晩飲んで食べてをくり返していたワタシもMも、
店には困らないが金には大いに困っていた。
  
参加費は1万円。
3人分までなら会社で出すからメンツを揃えてくれという美味しすぎる話。
  
「ハイ!行きます行きます!!」
 
ふたつ返事で承諾すると、すぐに同僚のMを誘う。
彼は体育会系の大きな体を揺すりながら、
これまた声優のように渋く大きな声で笑った。

「アッハッハァ!今晩はタダ酒か!nalちゃん、いい話もらってきたな!」

夕食一食分浮いた上に費用は会社持ち。ワタシもMもノンキに喜んだ。
そうしてもう一人のU先輩を誘って急いで仕事を片付けると、
私たち3人はパーティ会場へと向かったのだ。
渡された地図を頼りに会場へ向かう。
そこはセレブリティな住民、最先端のセンスを主張するショップ
そして数の多くはない億ションが立ち並ぶ、
ワタシの住む地域では一番の高級住宅街の一角。
 
わずかに残された静寂を感じさせる森の脇にその建物はあった。
そこには白亜のお城というか迎賓館というか、
少々時代錯誤な大正ロマンを感じさせる荘厳な建物がそびえ立っていた。
  
「普通こういうのってホテルでやるのに、珍しいよね。」
  
ホテルの宴会場でのイベントなら、
いつも取り仕切りを任されて司会もやらされたこともあるから
慣れているつもりのワタシとMだったが、こういう場所は初めてだった。
タダ酒が飲める期待感と同時に、うっすらとした不安がよぎる。
  
  
「ギ…ギイィィ……。」
  
  
背丈の倍以上はあろうかという重いドアを開けて、3人はホールに入った。
見事な調度品、絵画や彫刻が壁に飾られている。
はるか吹抜けの天井からはクリスタル製であろうシャンデリアが、
淡くボンヤリした光を放っていた。
  
まだ誰ともすれ違っていない。
大理石のような固い質感の階段を踏み締めて歩く。
   
この場の空気に戸惑い無口になりつつあったワタシを余所に、
Mはただでさえ広い肩幅を広げてグイグイ歩き続けた。
彼は、家柄というか育ちからしてこの空気に臆する男ではなかった。
ワタシとU先輩はMの後に続いて歩いて行く。
会場に到着し、受付を済ませたワタシは辺りを見渡した。
   
  
「オッホッホッホ。」
  
  
パーティ会場には人が溢れ賑やかで、そしてきらびやかな装飾が施されていた。
ワインが並べられ、ビュッフェスタイルで料理が広いテーブルに整然と並べられている。
100人近い人が、談笑を交わしていた。
   
違うのは、男性は皆タキシードを身にまとい、
女性は皆、結婚披露宴のようなドレスに包まれていたこと。
  
そして、ところどころで聞こえる笑い声が、
ドラマで見たことのあるような「オッホッホ」という笑い声だったことだ。
体全体から余裕を滲みだしている初老の男性たち。
鋭くも優しい目に、グレーの手入れされた髭。
そして相当な努力の賜物と想像できる50代くらいの美しい女性たち。
首元には四方八方に光を放つ大きなダイアモンド。
その中に混ざって、私たちと同世代と思える男性たちも居た。
しかし彼らも一様にタキシードを着込み小綺麗で清潔な雰囲気。 
  
ワタシは呆然と立ち尽くした。
  
「こ、ここは何処だ。何の会なんだ……。」
  
  
呆然としたままではラチが開かない。
とそこに主催者であるゼネコンの女性社長が颯爽と現れた。
私達はさっそく名刺を片手に挨拶におもむく。
   
「あらあら、わざわざお越し下さりありがとうございます。」
    
通り一遍の挨拶を交わすと、少々の雑談と今日のパーティの話になった。
  
「私達ファミリアのクリスマスパーティは毎年恒例ですのよ。」
「今日の料理も全部、生徒さんの作ったものなの。」
「ダンスの発表もありますから、楽しんで行って下さいね。」
   
   
”ファミリア(仮称)”
  
  
それは、高級住宅街に住む上流階級のご子息の習い事の学校。
社交界でのダンス、礼儀作法、食事のマナーや料理等、
これから華やかな世界へ旅立つ、
上流階級のお嬢様方のための花嫁学校だったのだ!!
  
そして正装に身を包んだ男性と奥様方はそんなお嬢様方のご両親たちだった。
中に紛れていた私達と同世代の男性たちは、
特別にパーティへの参加を許された御曹子たち。
そして私達もまた、一応上場企業の社員ということで、
特別に招待状を送られたセレブと期待された3人だったのだ。
   
   
   
……こんなの、聞いてないよ!!!
  
ここには居ない上司の顔が思い浮かび、
心の中で文句のひとつも言ってやりたくなっていた。
  
くすんだグレーのビジネススーツに、現場で汚れたままの革靴の私は、
いかにもこの場に不似合いで、浮いているように思えた。
そのまま急いで仕事場から来ているため、髪は乱れろくに顔も洗っていない。
ひるがえって回りの方々は、この会のために着飾って出席している紳士淑女ばかり。
    
「うわぁ……居づらい……辛すぎる……」
   
言葉の通りワタシは雰囲気に飲まれた。
U先輩はワタシの隣でチビチビとビールを飲んでいる。
Mは、やはり大物っぷりを発揮しておかまい無しに料理をよそい、
あえて胸を張っているわけではないのだろうが、
ビシっと背筋の伸びた姿勢で柔らかく笑っていた。
 
森に迷い込んだ子羊のように場違いな3人。
まさに異空間に入り込んでしまった私達3人は、
大なり小なりの動揺を胸に秘めたまま、壁際によりそって辺りを見渡していた。
 
 
そして、パーティは幕を開けたのだ。
  
 
 
 
 
 
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

続きはコチラからどうぞ♪

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 
 
 
 
 
 


スミマセン。
一話完結のつもりでしたが、長くなりそうなのでここで切ります。
たぶん次で終わりますので、よろしくお願いします。ペコリ。

 


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コメント 14

maya

うわわわぁぁぁあ!!
久しぶりに一番糊じゃん糊じゃんヾ(≧▽≦)ノブワハハハハハ!

「ギ…ギイィィ……。」って続いちゃったよ(´・ω・`)ションボリ
パーチィはいかに。。。
by maya (2006-03-15 13:40) 

斉藤ようこ_nina

わあ、その手のクリスマスパーティーって、もっとも危険なパターンですね(笑)
まだ10代のころ、教会のクリスマスパーティーに普段着に近い格好で参加して、浮きまくったことを思い出しました…。心臓に悪いったら…(笑)
続きが楽しみです。
by 斉藤ようこ_nina (2006-03-15 14:51) 

はる

うわ~ドキドキです・・・何が起こるんだろう・・・
ドラマなら~素敵なお嬢さんと知り合って・・・とか無いのかな?
by はる (2006-03-15 15:37) 

knacke

コレ、かなり続きが気になっちゃうよ。
早く読みたい・・・。
目の前にゴハンのはいった器を目の前におかれて、
待て!をされた犬なキモチ・・・。
ワン・・・。
by knacke (2006-03-15 17:55) 

面白い面白い!ドラマみたい!
続きが気になるよ~
by (2006-03-15 20:01) 

(ノ゚ο゚)ノ続きが気になります。。。
ボクだったら、仕事関係じゃなけりゃ逃げ帰ってるかも、、、です(^^;
by (2006-03-15 22:37) 

アキオ

続きはまた明日ね、、と言う意味を込めて、、niceを置いておきますね。。
by アキオ (2006-03-16 00:07) 

メイ

む?
コレは実話なのですか???
by メイ (2006-03-16 13:49) 

nal

>mayaさん
ギ、ギィィって何かでそうでしょ?
マジでそんなカンジだったんですよぉ!(笑)
>ひなぐまさん
無知がためにヘンな目立ち方する時って、、、ホントに恥ずかしいですよね、、、。
>はるさん
はるさんの妄想ではどんな話になるのか非常に気になります(微笑)
>きむたこさん
今回はちゃんと毎日書きます!!
でも、、、次で終われませんでしたね、、、(汗)
by nal (2006-03-16 15:11) 

nal

>のんのんさん
面白いですか?この頃は刺激的な体験がけっこう多かったですね。
>たろうさん
続きにありますが、けっこう面白かったんですよ♪
>akioさん
今日ちゃんとアップしましたー♪
でも終われなかった(泣)
>メイさん
おもいでがたりカテゴリーは全て実話でございます、、、。
by nal (2006-03-16 15:13) 

名古屋嬢がたくさんいましたか~?!
by (2006-03-16 19:18) 

nal

>たきゅたきゅさん
もっと清楚なセレブでしたよぉ!会いたい?(微笑)
by nal (2006-03-17 09:38) 

beer

行ってみたいかもw
by beer (2006-03-21 16:52) 

nal

>beerさん
あんまり目をギラつかせちゃダメですよ!(笑)
by nal (2006-03-22 12:40) 

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